旅の準備をしよう

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 全身に緑の鱗を生やし、下半身にふんどし一丁だけ身に着けた細い手足の老リザードマン、ドラクロは上機嫌に笑った。 「いつもすまないな。あいつ綺麗好きでさ」 「なぁに構わんさ。あの子と話すのは退屈しなくていいからな」  その時、ドラクロの縦に線が入った巨大な眼とクロイの横で佇んでいたマシロの美しい碧眼の視線が合う。 「おや、こちらさんは……初めて見る顔だな」 「あ、あの初めまして。エルフのマシロ・トゥルーホワイトと言います」  エルフであるマシロからしても外見が人よりもモンスターに近いリザードマンと接するのは緊張するようで自己紹介の声はどこかぎこちなかった。 「リザードマンでこの武器屋の店主ドラクロだ。そんなに緊張しなくても大丈夫だよお嬢さん、私はベジタリアンだ」  老齢の優しい声色でにっこりとほほ笑むドラクロ。  その物腰柔らかな雰囲気と対応にマシロは一瞬で警戒を解き、落ち着くことが出来た。 「今日は預けてた俺の武器を取りに来たのと、こいつの防具を買うために寄ったんだ」 「なるほど。ならまずはクロイの武器から返そうか」  クロイが要件を伝えるとドラクロは背後の戸棚からシルクの布に包まれた物体をカウンターの上に置く。  リザードマンの長細い指によってシルクの布が開かれると、そこにはマシロが見た事のない形をした武器があった。     
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