旅の準備をしよう

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「ああ、それが今回の自分の働きに見合った報酬だからと言ってな。クロイ鑑定所はその時に街の長が贈ったものだよ」  そこまで聞いてマシロはようやくクロイが街に馴染んでいる理由が理解できた。  コーネリアを救った英雄でなく、ましてや新たな支配者でも無く、彼はこの街の新たな住人の1人となる事を報酬として望んだ。  それはきっとこの街の事を気遣ってのことでは無く、クロイが本心から望んだ事なのだろう。  そんな裏表のないどこか爽やかな雰囲気に、街の者達は皆心開いたのだ。 「まぁ、ツケを払わないし自己中心的だったりと問題のある性格をしているが、皆本心ではクロイに感謝しているんだよ」 「な、何だかすごい話を聞いてしまいました」  話を終えたドラクロはカウンターの引き出しからなめし革を加工して作ったナイフの鞘のような物を出してクロイに投げ渡す。 「ほら、お前さんの注文通りエヴァを収めるための『ほるすたー』とかいうやつも作っておいたぞ」 「おお! サンキュー爺さん。エヴァのやつ先端部にナイフなんか付けてるから収納しずらくてさ」 「待ってくださいマスター。私はまだマシロ様と碌に会話をしていな――」  ホルスターをキャッチしたクロイは早速それを腰に巻いて口うるさくしゃべり続ける武器を問答無用で腰背部の収納口に差し込んだ。     
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