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あえてぴったりの部分を強調して発言する依頼人に嘆息しつつ財布の中身を確認すると残りは3万ゴールド程になっていた。
次のオークション会場である南の街サルナまでの食料とそこまで運んでくれる馬車の手配をその残金で済ませなければならない。
「安く済ましつつサルナとコーネリアの間にある山道を無事に往復出来る馬の扱いに慣れた奴……か」
「誰か心当たりがあるんですか?」
「ああ、黒い馬を操る女好きのダークエルフが1人な。丁度今お前の前で跪いてるその変態だ」
「え? 私の前でって……ぎゃあっ!」
マシロは突如悲鳴を上げてその場から飛び退く。理由はいつの間にか自分の目の前に知らないポンチョ姿の男が跪き、こちらを愛おしそうな目で見つめていたからだ。
「美しい。なんと美しいレディーだ……!」
どこからともなく現れた銀色の短髪に緑色の瞳、褐色肌の美青年ダークエルフは頬を紅潮させながら呟く。
「あなたのような美しいレディーには出会ったことが無い!」
「い、嫌だわ。美しいレディーだなんて、そんな本当の事を大声で」
歯の浮くような青年の台詞にマシロは両手を自分の頬に当てて体をくねくねと左右に揺らす。
このダークエルフは出会った女性全員に同じ言葉を言っている事をクロイは知っていたが、今は黙っておくことにした。
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