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「エルフのレディー、見た所お1人のようですね。もしもお暇でしたら僕の馬車でコーネリア観光でもご一緒にって痛だだだだだ」
ナンパの常套句を言い終える前にクロイの人差し指と中指が男の鼻の穴に突き刺さる。
「なーにがお1人だ。横に思いっきり俺がいるだろうがこの色情魔」
「て、テメーはクロイ! ちくしょう小さくて見えなかった」
「子供扱いすんじゃねーー!」
「ふがががが」
2本の指に力が籠められてダークエルフの鼻が吊り上がり、端正な顔立ちが台無しになっていく。
マシロはそんな2人のやり取りをただ茫然と見つめていた。
「あのー、クロイさん。この方は?」
「こいつはキース。馬車乗りの運び屋だ」
「初めまして美しいレディ。キース・フォードです。以後お見知りおきを」
キースと名乗ったダークエルフの青年はクロイに指鼻フックをされたまま笑顔を向け、手を差し出す。
強制的にブタ鼻の形にされている恐らくは同い年くらいであろう男からの挨拶にマシロは頬を引きつらせながら握手に応えた。
「クロイさん、もうその辺でいいでしょう。初めましてキースさん。今日この街に来たばかりのマシロと言います」
そう宥められ、ようやくクロイの両指がキースの鼻の穴から引き抜かれる。
「僕の顔が変形したら世界中の女が悲しむってことをいい加減覚えろよ。あー痛かった」
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