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それまで隣で黙って話を聞いていたクロイがキースの腹に渾身の右ストレートを放ち、悶絶させた。
「ほげぇっ!? い、いきなり何しやがるこのガキ……」
「言葉通りの意味だ。こっちには金が無いから1万にまけろ」
「ちょっとクロイさん!? 何言いだすんですか!?」
突然の要求にマシロは驚きの声をあげる。
せっかくキースが相場よりも低い値段で仕事を引き受けてくれているというのに、さらに値切りをするなんて下手をすれば依頼をキャンセルされるかもしれない。
一体なぜクロイがこんなことを言い出すのかマシロには解らなかった。
「お前の言う2万ゴールドの中には道中の護衛を雇う金も含まれてるよな?」
「あ、当たり前だろう。傭兵がいなきゃ誰がモンスターや盗賊から馬車を守る」
運び屋の契約金が高い理由。それは命がけの仕事を任せるからという事の他にも道中の危機から守ってくれる戦士の雇用代も契約金に含まれているからである。
傭兵がいなければ馬車は無防備となりモンスターや盗賊にとって格好の的となってしまうのだ。
クロイは高いと口にしたが、戦士の雇用代を考えればキースの提案した額はやはり良心的だったのである。
「傭兵はいらない。俺とエヴァがサルナまで馬車を守ってやる。だから契約は1万ゴールドだ」
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