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「1万ゴールドで……いいな?」
その最後通告に抗う術などなかった。
もしも断れば実の妹に命を狙われる悪夢の一夜が待っている。
キースは地面に両手をつき、まるで土下座でもするかのように首を縦に振った。
「決まりだ! 安心しろ、そこいらの傭兵なんかよりエヴァは強いから」
交渉が成功し嬉しそうに膝を叩くクロイ。マシロはそんな2人の様子をただただ唖然としながら見つめているだけだった。
「それでクロイ、出発はいつなんだ?」
「4時間後に南門前に集合だ」
「また随分急だな。クリケット、ひとっ走り行けるか?」
飼い主にそう尋ねられた黒馬クリケットはただ短く、しかし力強くヒヒンと鳴く。それはまるで任せろと言っているようだった。
その誇り高く、凛々しい姿にキースは表情を一変させて口の端を吊り上げる。
「さすがは僕の愛馬だ」
「……キースもクリケットくらい寡黙なら少しは良い男になるんだけどな」
「まぁいいじゃないですか。無事に馬車も確保できましたし、後は食料と医薬品を揃えてサルナに向かうだけですね」
こうして鑑定士クロイ、依頼人マシロ、運び屋キースによる3人旅が決定した。
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