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彼は街中で口にしたナンパの台詞を妹にばらされない為に無理矢理格安の仕事をさせられている。当然愉快なはずはない。
「あの……すいませんでしたキースさん。こんな脅迫紛いのお願いをしてしまって」
荷台から運転席の方へ顔を出し、申し訳なさげにマシロは謝罪した。
脅迫したのはクロイだが、元を辿れば自分の依頼に第三者を巻き込んでいるのだ。
責任を感じずにはいられなかった。
そんなマシロの顔を見てキースは自分の顔をぐいっと近づける。
「マシロさんのせいじゃないよ。それに危険な旅でも君のような美しい女性と一緒なら僕は幸せさ」
「い、いやですわキースさん。美しいなんてそんな本当のことを」
ダークエルフの美青年に手を取られながら見つめられ、マシロは頬を紅潮させた。
馬車の中に充満する甘酸っぱい雰囲気。
この流れならば確実に落とせると踏んだキースは目を血走らせながら更に顔を近づける。
「マシロさん。無事にコーネリアに帰ってきたら是非僕とデートでもって痛だだだだ!?」
「学習能力が無いのか貴様は!」
しかし、渾身のデートお誘いは最後まで言う事は出来なかった。
突然現れたクロイがキースの鼻に指を突っ込んだからだ。
「クロイさん!」
「な、何て嫌なタイミングで現れやがるんだこいつ……」
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