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とは思ったものの、その割には外部から人の気配を一切感じないし、音も全く聞こえない。それに棺桶に詰まっているはずの弔花や好物のナッツタルトも入っていなさそうだ。
とりあえず、私は両腕を上げてみた。何であれ、上方を塞いでいるものをどけてやるつもりだったのだ。
しかし、そもそも腕が上がらなかった。床から指一本分の虚空を越えられないまま、情けなくぷるぷると震えている。
私は唖然とした。どれ程長い間微動だにせず意識喪失していたというのだろうか。
(仕方ない、衝撃波で蓋を開けてしまおう)
ごく自然にそういう発想に至った。
どの程度の厚さと頑丈さの蓋なのかは分からないが、術式省略、詠唱破棄で充分だろう。私は世にも珍しい無属性特化型だ、省略なしで繰り出せば、木蓋だろうが鉄製の扉だろうが、町を二つ越えた先の空間までぶち抜いた上で塵も残さず程破壊してしまう。
そこまで考えて、私がそういえば魔術師だったこと、ついでに何故このような状況に陥っているのか、朧げながら思い出してきた。
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