勝手に封印ダメ、ゼッタイ

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 確か、口論になったのだった。指導教官の定年退職祝いの酒の席で、最初は仮にも魔導院生のくせに教官の推薦状で王府に入ったお前は甘えている――と、現在機関の助手をやっている友人に突然罵られ、腹に据えかねたので実家金持ちだからモラトリアムしている癖に何言っているんだと応戦、そして……  ……それ以降が全く思い出せない。  まあ考えあぐねても仕様がない。脱出が優先だ。     私は置物のように動かぬ体とは対照的に、思考回路を高速で稼働させる。何百何千回と過去実践してきたように、体内に散逸された魔力を一点に収束、脳内でいくつかの変数を取り除いた簡易術式を構築、魔力収束度数を高めるための詠唱は破棄――上方に向けて術を放つ。  破壊音がした。  まずバキン、と金具か何かが折れる音、次におそらく木製の何かが割れて吹き飛び、床に叩き付けられたような音。ついでに、かび臭さが幾らかましになって新鮮な空気が流れてきたような気がする。  私の眼前から闇が取り払われ、灰色の天井らしきものが一面に広がった。僅かな光――おそらく自然光が差し込んでいるだけの薄暗い空間だが、長い間完全な暗闇に閉ざされていたらしい私の目には眩しく感じられた。
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