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おもむろに、謎の数字を言った。
ふと目線を彼女の腕に向けたミコトは、見慣れないブレスレット型のアイテムを発見する。
だが、知ったことではなかった。
どんな攻撃でも、自分を傷つけることはできないのだから。
「2」
ミコトは思考する。ゴム剣でダメージは与えられないが、柄頭で殴ればある程度傷は作れる。
「1」
シトは、ニヤリと笑った。
喰らっても喰らわない。死んでも死なないミコトの背に、ゾッと何かが走った。
「〈add.0〉」
唱えると同時、シトが纏った深赤のアーマーが、その接合部を黒く光らせ変形。
黒色光という見たこともない光に目を細めた後、眼前に立つ少女に目を奪われた。
彼女は、影を纏っていた。
黒の燕尾服。
男性装束の筈のそれは、恐ろしいほど彼女に似合っている。
伸びる裾に走る深赤のライン。
手に持つゴム槍すら黒く塗り潰し、そこに立つだけで気圧される。
「さぁ、面白いものを見せておくれよ」
それでもミコトは笑いを消さない。
新しい能力だろうが、それがどれだけ強かろうが、自分を傷つけることはできない。
全ては虚構世界へと送られる。
しかし、僅かな引っ掛かりを感じるのは確か。
──あの影は、どこか見覚えがある。
シトが黒槍を構えた。
グッと腰を落とし、前方へ跳躍。
したはずが、その姿は影と混ざって消えた。
「瞬間移動......!?」
背後に気配。とっさに振り返る。
手を伸ばせば届く範囲に、槍を構えたシトの姿。
まるで、影に入って、影より出たかのような瞬間移動。
そして彼女は、バットを振りぬくように、槍をフルスイング。ノーガードのミコトの脇腹にめり込む。
「......かっ!!」
想像を絶する衝撃に、声すら出ない。
そのまま紙屑の様に吹き飛ばされ、地面を転がる。
──痛い。痛みが、終わらない......!
いつもなら、とっくにダメージは送られている。
しかし、確かに受けたダメージが自分の体にあった。
足に力が入らずうまく立てない。
燃えるように熱くなる脇腹。
玉のように溢れる汗。
地面に吸い込まれていくそれを見て、ふと地面が影になり顔を上げる。
パン。と、頬を打たれた。
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