琴浦ミコト登場回

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「阿保。その年で人生つまらんって何言うとんねん。まだアンタなんも知らんやろ。この先何があるかわからへん。事実今日ウチに負けたわけやしな。まぁ、それでもアンタが『つまらん今』を生きたないって言うんやったら、ひとまずはウチを倒すことを目標にしいや。それだけで、十年は有意義やろ」 深赤の装甲に戻った彼女は、ニッと笑ってミコトの頭を撫でた。 ミコトは敗北を知り、そして目標を得た。 ▽ 「人ってのは多分さ、何か目標を見つけて、それに向かって努力して。叶っても叶わなくても、また次の目標を見つけて。そうやって生きていくんだよ。『生きる意味』がある。だから楽しいんだよ」 全てが出来てしまう。ゴールは常に手の届く場所だった彼は、その人生の楽しみを知らなかったのかもしれない。 「僕の人生は悲劇的でないにせよ否劇的だ。そんな人生に、ほんの一滴彩りを加えてくれた彼女に、僕は感謝している」 なんだ。そういうことか。 オレは、笑った。 「君はもう、救われていたんだね」 「ああ」とミコトも笑う。 それは年相応の、屈託のない笑みだった。 「人と違っても、理解されなくても、これが僕の生き方さ。嘘で殺し、嘘で蘇り、されど自分に嘘はつかない。このクソつまらない人生を、いつか主人公ちゃん(かのじょ)に勝つために。それだけのために生きるのも悪くない」 それはあまりに脆い『生きる意味』だった。歪んだ『生きる意味』だった。 それでも、次の『生きる意味』を知るための礎となればいい。 例え今がどれだけクソッタレでも、小さな意味を見つけて次へと繋ぐ。 未来なんて誰も、誰もわからないのだから。 ▽ 『アンタらいつまで喋ってんねん!早よ加勢せい!』 無線越しで叫ぶコトハ。 オレとミコトは顔を見合わせ笑った。 いつも通りの薄い笑みだったけれど。 「行こうか」 ミコトは覆剣(メビウス)を抜いた。 「おう」 瓦礫の山を、二人で駆け下りる。 ▽ 『今回のレベル4の能力は〈急速成長〉。これ以上成長しようのない奴は、分裂(転移)を繰り返しレベル1、2の数を増やし続けている。奴を仕留めなければキリがないぞ!』 諏訪司令の声が無線に響くが、無限に湧き出る低レベルに手がいっぱいで、群勢の中央にいるレベル4には手が出せない。 「僕が行こう」 ミコトはそう言うと、左腕を胸元に持ってきた。
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