0人が本棚に入れています
本棚に追加
「阿保。その年で人生つまらんって何言うとんねん。まだアンタなんも知らんやろ。この先何があるかわからへん。事実今日ウチに負けたわけやしな。まぁ、それでもアンタが『つまらん今』を生きたないって言うんやったら、ひとまずはウチを倒すことを目標にしいや。それだけで、十年は有意義やろ」
深赤の装甲に戻った彼女は、ニッと笑ってミコトの頭を撫でた。
ミコトは敗北を知り、そして目標を得た。
▽
「人ってのは多分さ、何か目標を見つけて、それに向かって努力して。叶っても叶わなくても、また次の目標を見つけて。そうやって生きていくんだよ。『生きる意味』がある。だから楽しいんだよ」
全てが出来てしまう。ゴールは常に手の届く場所だった彼は、その人生の楽しみを知らなかったのかもしれない。
「僕の人生は悲劇的でないにせよ否劇的だ。そんな人生に、ほんの一滴彩りを加えてくれた彼女に、僕は感謝している」
なんだ。そういうことか。
オレは、笑った。
「君はもう、救われていたんだね」
「ああ」とミコトも笑う。
それは年相応の、屈託のない笑みだった。
「人と違っても、理解されなくても、これが僕の生き方さ。嘘で殺し、嘘で蘇り、されど自分に嘘はつかない。このクソつまらない人生を、いつか主人公ちゃんに勝つために。それだけのために生きるのも悪くない」
それはあまりに脆い『生きる意味』だった。歪んだ『生きる意味』だった。
それでも、次の『生きる意味』を知るための礎となればいい。
例え今がどれだけクソッタレでも、小さな意味を見つけて次へと繋ぐ。
未来なんて誰も、誰もわからないのだから。
▽
『アンタらいつまで喋ってんねん!早よ加勢せい!』
無線越しで叫ぶコトハ。
オレとミコトは顔を見合わせ笑った。
いつも通りの薄い笑みだったけれど。
「行こうか」
ミコトは覆剣を抜いた。
「おう」
瓦礫の山を、二人で駆け下りる。
▽
『今回のレベル4の能力は〈急速成長〉。これ以上成長しようのない奴は、分裂を繰り返しレベル1、2の数を増やし続けている。奴を仕留めなければキリがないぞ!』
諏訪司令の声が無線に響くが、無限に湧き出る低レベルに手がいっぱいで、群勢の中央にいるレベル4には手が出せない。
「僕が行こう」
ミコトはそう言うと、左腕を胸元に持ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!