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「なに!?」
「『突き刺さった』ら、『傷を負う』。でも『傷を負わなかった』んだから、『突き刺さっていない』。そうでしょ?」
そう嗤う少年に、レベル4は恐怖を覚えた。
その笑みは、恐ろしく歪んでいる。
「......なるほどな。第三世界にすら手を出す能力。挙げ句の果てには因果にさえ干渉するか」
彼に突き刺さった柱は全て地面に捨てられた。
玩具のように変えられた自分能力を見て、しかしレベル4も笑う。
「だが所詮は言語能力。言霊が尽きれば死ぬ。さて、お前は何度死ねば死ぬ?」
「さぁ?案外三回くらいかもよっ!」
大剣を構えて突撃する彼に何度も突き刺さる柱。
しかし止まることなく、レベル4に接近。
大上段から大剣を振り下ろす。
地面を砕いたその一撃はしかし、大きく跳んだレベル4に避けられた。
「その大剣を封じれば、お前に攻撃手段はあるまい!」
空中から放たれた光の柱は、大剣の周囲の地面に刺さる。
様々な向きに刺さったそれが大剣に引っかかる。
「くそっ!剣が抜けない!」
初めて焦りを見せた彼に、レベル4は突撃。
「まずい、さっきのアレだ!琴浦君逃げて!」
ゼロ距離で放つ、柱の中へと閉じ込める技。
スズリを戦闘不能に追い込んだ技だ。
「高エネルギーの柱の中なら、お前は無限に死ぬだろう!?」
「抜けないっ......!早く抜けろっ!くそっ!」
ガチャガチャと大剣と格闘する彼のすぐ背後にレベル4。
レベル4は笑っていた。勝利した確信があった。
自身の得意技を今、目の前のキャスターにぶつけ──
「──なんて、嘘」
ただ、彼も笑っていた。
大剣の刀身部分は地面に残したまま、振り返りながら薙いだのは片手剣。
レベル4の腰部を両断し、崩れ落ちるそれを見て、さらに笑みを歪めた。
「......どう、して!」
「この剣が大剣だと、言った覚えはないんだけどなぁ」
そう。彼の剣はマトリョシカ状になっていた。
大剣の刀身は、その下の長剣の鞘でもあり。
長剣の刀身は、その下の刀の鞘でもあり。
柄の部分をダイアルのように回すことで抜刀する剣の種類を決められるそれは、
「騙し討ち、不意打ちにピッタリの武器だよ」
手の中の片手剣を翳しながらそう言った彼は、続ける。
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