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「『この剣が大剣である』は嘘じゃない。だが本当でもない。嘘はまた真であり、真もまた嘘である」
トドメに、まだ足下で僅かに動くレベル4に片手剣を突き刺した。
「故にこの剣の名は〈メビウス〉。スズリとメカニックと作り上げた、僕専用の武器さ」
▽
「はじめまして主人公君!知っててくれたけど僕の名前は琴浦ミコト。名古屋支部からやってきたキャスターだよ!よっろしくー!」
やたら芝居掛かった口調で自己紹介しながら、抱きついてくるミコト。
「主人公?」
「スズリ久しぶりー!背ぇ伸びた?」
何を言っているのかと聞く前にスッと離れると、スズリ、ナタリア、コトハと暑すぎるスキンシップを繰り返していく。
「な、なぁミコト君?」
「ミコトでいいよー。なに?」
身体は奥を向きながら上半身を逸らし、こちらに顔を向けた彼は問う。
オレは、勇気を出して言った。
「サインください」
▽
「グッジョブよ!ユウキ!」
天才子役琴浦ミコト直筆サイン色紙を持って帰ったオレに、母さんは親指を立てた。
「ほぉ。あの子役がキャスターだったとはな」
そう、膝の上のぽてとが言った。
そろそろ10歳を迎えるマーブル色ポメラニアンの渋い声は、少し弾んでいるように聞こえた。
「ぽてとドリアン大好きだったもんな」
「そうだな。練られたトリック。小学生という設定ならではの視点。そして、1話から張り巡らされた伏線。どれを取っても一級品と言わざるを得ない」
そう評するぽてとを膝の上から降ろして、器の中にミルクを注いでやる。
美味しそうに尻尾を振りながら飲むぽてとを優しく見ながら、母さんは言った。
「でも名古屋支部だったんでしょう?東京へ通うの大変だったんじゃないかしら」
「ああ。なんか、『対策室と自分の能力をゴリゴリに使いまくってた』って言ってたよ」
彼の能力、〈劇的な嘘〉。
斬られても斬られない。
撃たれても撃たれない。
そんな強すぎる能力はしかし、
「本当に刺さってるように見えたんだよなぁ」
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