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「僕?一位だったけど、どうして?」
その日の夕方、例によって開かれた歓迎パーティの最中、オレは何気無く勉強について聞いてみた。
返ってきたのは、全国テストの順位。
「一位!?」
「それも毎回な。俺が絶対に一位になれないのは、ミコトが原因だ」
そう言って寿司を頬張ったスズリは、「うんうまい」と頷いた。
「俺にとっては、超えたい壁といったところかな」
「スズリはいい子だなぁ。僕だったら『どんな手を使ってでもそいつを一位から引きずり下ろす』けどね」
「お前ならその『どんな手』が本当にできそうだから怖いよ」
スズリとミコトは、仲が良さそうに見えた。
そうか、今までスズリの周りに同年代の男の子はいなかった。
自分の裏の仕事を知る、数少ない友達なんだろうと思う。
「えっと、ちなみに1日何分勉強してる?」
「俺は、そうだな......学校の時間を抜いたら4、5時間」
「僕は30時間くらいかな?」
「5時間......!?30時間......!?」
一瞬で二回驚いた俺は、自分の頭の悪さに悩みながら、今日五貫目の中トロに手を伸ばした。
「あ!こらユウキ!あんた中トロ取りすぎやで!」
「いや待てその前に!1日は24時間だぞ!?」
「あっはは。ウソだよ主人公君。本当のことを言うと、学校以外じゃ勉強はしないな。授業聞いたら大体覚えるから」
「ふわぁ、凄いねミコト君。私何回も復習しなきゃ覚えられないよ」
ワイワイと、パーティは進んでいく。
▽
「そうか、勉強時間0分で全国一位ね。それは本物の〈天才〉だな」
伊吹さんは俺の前にオレンジジュースを置き、自身の椅子に腰掛けた。
対策室のことは隠し、転校してきた子としてミコトのことを話したのだった。
「いいなぁ。俺もそんな頭に生まれたかったなぁ」
「まぁ、なんでも出来てしまうって事が幸せとは限らんぞ?」
「えぇー?そうかな。でも勉強しろ!って言われないんでしょ?」
グデェとテーブルに突っ伏しながらそう言う。
「そう、しかもその子芸能人なんだよ」
「へぇ。何やってるんだ?」
「最近始めたらしいんだけど、代表作は〈小学生探偵ドリアン〉のドリアン役」
ブッと、盛大にコーヒーを吹き出した伊吹さん。
「マジか。超人気子役じゃないか」
「超人気子役だよ」
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