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「えぇ、もう少し時間がかかるから
お先にどうぞ」
そう言いながら縫い続けた。
今日あの男は、仕事で遅くまで
帰って来なかったので大分進んだのに…。
「さっきから何を作っているのだ?
子供用の服か…?」
「えぇ、そうよ」
それだけ応える。
どうやら私のしている事が気になるらしい。
気にしなくてもいいのに…迷惑だわ。
「服なら市販のを買えばいいだろう?
何故わざわざ作ったりするんだ?」
あの男の言葉に手が止まる。
思わず幼い頃の事を思い出してしまう。
「…私の母もお嬢様だったの」
「はぁっ?」
「そのせいもあって
家事を一切やらない人だったわ。
全て使用人任せ。
だから世でいうお袋の味とかまったく知らない」
「小学校の頃は、普通の小学校に通っていたけど
周りの子達がいつも羨ましかったわ」
母の作ったり手作り弁当や小物
一緒にお菓子作りをしたとか嬉しそうに
自慢する同級生の子達が羨ましかった。
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