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「──っ、ジル、お兄様」
私はその言葉に涙が出てしまった。
私達が互いを普通の兄妹として接していたのは、お母様が亡くなるまでの僅かな期間だった。それこそ、私は幼かったから理解が出来なかった。お父様を人前ではダーウィ様と呼ぶのと同じことだと、お父様は言っていた。
私はそれからお父様の補佐をすることで敬語に慣れようとした。最初は困った顔をしていたお父様も、その内受け入れてくれた。
涙を拭い、顔をあげるとジャスティお兄様も心なしか、穏やかな顔つきとなっていた。
それから私達は普通の兄妹みたいに雑談をしながら、食事を楽しんだ。食事中の会話はお行儀悪いけれど……こうして話すのは、幼い頃を思い出せてとても楽しい。
ほろ酔い気分になった頃、私は普段は言わないワガママがつい口から出てしまった。
「ねえ、ジャスティお兄様。たまにこうして食事をしない? 気分転換になるから、とてもいいと思うの」
「ミレー、私は基本的に王都にいるんだぞ? 無理だ」
「そう言わずに、ねえ、ジルお兄様」
「──たまになら、いいんじゃないか? 」
「はあ……全く……。次はいつになるか分かんないけど、それでも構わない? 」
「うん、ありがとう」
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