あの日の放課後

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 放課後(ほうかご)教室(きょうしつ)で将来の夢を黒板(こくばん)()くのが流行(はや)っていた。  (みんな)色々(いろいろ)な夢を書く、幼稚園(ようちえん)先生(せんせい)看護師(かんごし)、スチュワーデス、芸能人(げいのうじん)、モデル、学校(がっこう)の先生、お花屋(はなや)さん、美容師(びようし)。  でも、この(なか)で将来の夢を叶えることが出来(でき)(ひと)一体(いったい)何人(なんにん)()るんだろう?  ユミにも将来の夢はあった。あったが、(すで)過去形(かこけい)だ。その職業(しょくぎょう)人口割合(じんこうわりあい)(かんが)えると到底(とうてい)なれるものじゃなかったからだ。  幼稚園の先生、学校の先生、看護師、美容師。この辺りは頑張(がんば)ればなれる職業。でもスチュワーデス、芸能人、モデル、お花屋さんはどうだろう?かなり(かぎ)られた人しかなれないのではないか。  (すく)なくとも、ユミの(まわ)りにスチュワーデスも芸能人もモデルも居ない。お花屋さんはあるけど、(まち)に1(けん)だけだ。それが人口4000人程(にんていど)(ちい)さな街の現実(げんじつ)。  だから皆がやる将来の夢を書く(あそ)びをユミはやらなくなっていた。 「ユミちゃんは何になりたいの?」  (ほか)のクラスの女子が、教室の後ろで様子(ようす)()ていただけのユミに(こえ)()けてきた。 「そうだよ、ユミちゃんも書きなよ」  口々(くちぐち)()ってくる。  こういう場合(ばあい)下手(へた)(ことわ)ると女子達(じょしたち)機嫌(きげん)(そこ)ねてしまうのを()っている。どうしようか思案(しあん)していたが、こう(こた)えた。
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