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私はただ微睡むはずだった。大仏が半眼を以って視るように。私も再び集中して午後の仕事に取り組むために。いささかを心身の休息に充て、五感を研ぎ直す。つまりは仮眠をとるつもりだった。
しかし、睡眠欲は脳を飛び出していた。神経を支配して身体に麻酔をかける。──遅かった。
目を覚ますともう夕飯時を伺わせる茜色だ。普段はただただ気味の悪い鈍色の部屋もいささか美麗なフィルターがかけられている。
──ん?
ここで私は初めて気がつく。そこにあったのはツナ丼。恐らく市販のツナをご飯にふりかけただけの代物。安っぽい。
だが、神経は意図しない脊髄反射を起こした。
──食べたい…!!
私は半ば寝ている身体を起こす。いや、鞭打って服従させる。目の前の幸せの為に、恐らく私の目は今まさに見開かれている。
私はもはやかぶりついていた。
ただ、その夕飯を食べつつ冷静な自分が呟いた。
『ここは、どこ?』
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