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「はるちゃん!」 遠くから名前を呼ばれた長峰(ながみね) (はる)は慌ててスマホをしまうとすくっと立ち上がった。 声のしたほうへ向くと、手を振りながら(いずみ) 広翔(ひろと)が小走りで走ってくるのが見えた。 「ごめんね。待った?」 「ううん、大丈夫」 並んで歩く中、何度もこちらを(うかが)う様子が気になって、ふいと顔を上げる。 目が合うと広翔は慌てて顔を逸らせた。 「何かついてる?」 「え?」 「……さっきからちらちら見てるから」 おずおずと尋ねると、彼はぶんぶんと大きく手を振った。 「大丈夫!何もついてなんてないよ」 「じゃあ、どうして?」 「えっ……その……今日もはるちゃん、可愛いなあと思って」 そういう彼の顔はほんのりと赤く、それに気づいた途端急に顔が火照ってきて思わず俯いた。 「一緒に帰るの久しぶりだから、すごく嬉しくて……」 申し訳なさそうな広翔に、首を横に振る。 「ううん、私の方こそ部活ばっかりでごめんね」 「謝らないで。部活がんばってるはるちゃんも僕は好きだから」 ちらりと見上げるとにこやかな笑顔で見返されて、心臓の音が少し煩くなる。 彼は優しくて王子様みたいな人。     
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