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【1】
「はるちゃん!」
遠くから名前を呼ばれた長峰 春は慌ててスマホをしまうとすくっと立ち上がった。
声のしたほうへ向くと、手を振りながら泉 広翔が小走りで走ってくるのが見えた。
「ごめんね。待った?」
「ううん、大丈夫」
並んで歩く中、何度もこちらを窺う様子が気になって、ふいと顔を上げる。
目が合うと広翔は慌てて顔を逸らせた。
「何かついてる?」
「え?」
「……さっきからちらちら見てるから」
おずおずと尋ねると、彼はぶんぶんと大きく手を振った。
「大丈夫!何もついてなんてないよ」
「じゃあ、どうして?」
「えっ……その……今日もはるちゃん、可愛いなあと思って」
そういう彼の顔はほんのりと赤く、それに気づいた途端急に顔が火照ってきて思わず俯いた。
「一緒に帰るの久しぶりだから、すごく嬉しくて……」
申し訳なさそうな広翔に、首を横に振る。
「ううん、私の方こそ部活ばっかりでごめんね」
「謝らないで。部活がんばってるはるちゃんも僕は好きだから」
ちらりと見上げるとにこやかな笑顔で見返されて、心臓の音が少し煩くなる。
彼は優しくて王子様みたいな人。
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