私と私

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 どれくらい時が経ったろうか。目を覚ますと部屋には誰もいなかった。先程までは確かにマサトと楓がいたはずなのに。ここ最近でこんなことは初めてだった。必ず誰かいる。誰かが自分の生活空間を歩いていた。  もしかしたら病気が治ったのかもしれないと、しばらく様子を見ることにした。ぬか喜びはしたくない。  勉強が大好きなマサトは、大きな体のわりにとても繊細で、いつも周りを気にかけていた。特に寺田さんのこと。私だってあまり話をしたことがないのに、なぜか彼だけが知っていることもたくさんあった。    一方楓は、ほっそりと病弱そうに見えたが、目がギラギラして芯が強そうだった。マサトを見ているようで私のことを見ていることもあり、それがちょっぴり恥ずかしかったがうれしくもあった。この二人はとても仲がよく、いつもその様子を見守っていた。  しかし何日経っても二人が現れることはなかった。ベッドに横たわったまま天井を見上げると目頭が熱くなる。寂しい気持ちもあったが、うち震えるような喜びの方が何倍も勝った。 「どうしたの?」  不審に思った母が心配そうに見つめてくる。  ずっと看病してくれた母。仕事は休んでいるのか、辞めてしまったのか、毎日のように会いに来てくれた。入院費用だってバカにならないだろう。父の給料だけでやっていけるのだろうか。今さらだが、迷惑をかけて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。  でももう大丈夫だ。退院できる。普通の高校三年生に戻れる。受験をがんばる普通の女の子に戻れるのだ。
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