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「そこでなにをしている」
近づいてくる声に気づくと、三人は胡乱な表情で振り向いた。わしづかみされていた肩を乱暴に離されて、キケロはその場でしりもちをついていた。
長衣についてしまった土ぼこりを軽くはたいてゆっくりと立ち上がる。声のする方へ視線を向けると、見覚えのある男がこちらを眺めていた。
「なんなんだよ、アンタはっ」
三人はそれぞれに肩をいからせて野犬のような唸りをあげるが、従者を連れた長身の男はかまわずに繰り返した。
「ここでなにをしているのかと聞いている」
ティトゥス・ポンポニウス――通称アッティクスは、根が生えたように動けなくなっているキケロの隣に立つと足を止めた。
キケロは何度も目を瞬かせて、隣に立つ旧友を見つめていた。
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