153人が本棚に入れています
本棚に追加
手足の長いアッティクスには、流れるような折り目のついた真っ白な長衣を巻きつけた姿がよく似合う。うしろには細長い包みを手に捧げ持った、まだ年若い従者が控えていた。一目でひとかどの人物だと見てとれる。
頬に傷のある男は薄笑いを浮かべて、泥のついた外套を見せつけるように広げた。
「なあ、アンタ。これを見ろよ。このチビがよぉ、けつまずいて転んで、オレの外套を汚しやがった」
「それはすまないことをした。それで、君たちはいま、私の大事な友人になにをしようとしていたのかな」
「あァ? なんだよ、アンタ」
「おい、もうよせよ。行こうぜ」
脇にいた二人は仲間の肩を揺するが、傷の男は大げさに鼻を鳴らすだけで取り合おうとしない。
「ろくに謝りもしねェで逃げようとしてたからよォ、ちょっとばかし、大人の礼儀ってモンを教えてやったンだよ。それともなにか、アンタがオレの外套を弁償してくれンのか?」
傷の男は目を細めて、アッティクスを値踏みするように眺め、舌なめずりしている。目的は明らかだった。たかれる相手から、できるだけふんだくろうと考えているに違いない。
最初のコメントを投稿しよう!