1章 凱旋

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「監督は元気か?」 苦し紛れに話題をそらす 「おいおい来月からは監督じゃなくて校長先生だろ」 柏木はオムライスを水で流し込んで言った 監督とは俺と柏木が高校生の時の陸上部監督の梶谷幸三のことで 俺が柏木と顔を合わせなければならなくなった原因を作った張本人である 「お前は今フリーターだろ?」 「じゃあ今俺が勤めてる私立高校の陸上部の顧問をやってくれよ」 「柏木が今コーチでいるからお前もやりやすいだろ」 相変わらずの身勝手な爺であった だが実際実業団時代にほとんど貯蓄をしなかった俺は生活に困っていた いやいやではあるが給料もよく陸上に携われるのは正直ありがたい 気が付くと二つ返事で「よろしくお願いします」と言っていた 「まあ監督は相変わらずだよ。でもちょっと牙が折れたかな」 「そろそろ定年だろ?鬼軍曹も落ちたもんだな」 白髪交じりの顎髭を蓄えた鬼軍曹は5年前退役軍人になって校長となったらしい 「おいおいあんまり上司の悪口は言うなって」 「何言ってんだお前だって口を開けば悪口じゃなかったか?」 「高校の時の話だろ?時効だよ時効」
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