1章 凱旋

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主将だった柏木は監督に怒鳴り散らされることが多かった 中には理不尽なものも多く、怒られて帰ってくるたびに柏木は同期に愚痴っていた 「鬼軍曹が今じゃ生徒におじいちゃんおはよーとか言われてるからな」 「マジかよ。俺らがそんなこと言ったら二度と立ち上がれないぞ」 「生徒指導の面からはあんまよくないけど、監督も満更でもないから強く言えないのさ」 柏木は苦々しく吐き捨てた 「ほんとに牙折れちまったみたいだな」 冷めたコーヒーをすすりながらそう言うと 「牙がなくなって総入れ歯になっちまったよ」 と柏木も笑いながら続けた 「でも腐ってもこれから挨拶に行くのは俺らの恩師で鬼軍曹で上司なんだからな」 「分かってるよ。さすがに失礼な態度はとらないよ」 今回富岡に来たのは件の顧問を務める富岡女子高校への挨拶をするためである もちろん顧問だけでなく社会科の担当としての採用でもあるため これから上司となる人への自己紹介をするためのものでもある
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