プロローグ テイクオーバー

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電車に揺られながらぼーっと外を眺める 電車の窓には雨がぶつかってくる 天気が悪い日はアキレス腱がきしむような痛みがする その痛みが自分の実業団時代を思い出させて胸を締め付ける 人生とは後悔する為に過ごすものである。といった有名人がいたが もしそれが本当ならば人生はあまりに忙しいものだ 後悔が多すぎる。あまりに多い 雨は気分を落ち込ませる 今日やたらと哲学者チックなのは雨のせいだ 雨にはいい思い出が全くない 大学生の時、初めて28分台で走った直後に抜擢されたデビュー戦は台風で中止になった 史上初のことらしいが俺にとっては知ったこっちゃない その後調子を崩して結局大学四年間は襷をかけたことはなかった 夢にまで見た襷は胸にかけられなかったのだ 何とかトラックで結果を残して零細実業団に契約をもらったが チームは4年後に解散 その時大けがをしていた俺は契約を手に入れることができずフリーのランナーになった フリーの時に目をかけてくれた某実業団の監督の前で大凡走をした時も雨だった 結局あれから2年、契約はおそらくもうないだろう ああ、また憂鬱になってきた
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