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早朝 父と話した後に、ひたすら化粧台の前に座って髪をすく。フランツとの約束の時間まで1人で居たくて、外に出る身支度も己の手でやることにした。
永遠に離れるであろうこの国での、これまでの生活を振り返って居られる束の間の時間とも思えた。
いつの間にか、約束の時間はもう過ぎていた。てっきり部屋に来ると思い込んでいたサリエルは慌てて屋敷の中を探したけれど、見当たらなくて、急に用事が出来てしまったのかと諦めて自分の部屋で一息ついた頃
部屋窓がカタカタと揺れる音がした。どうやら外の風が強いようだ。
風はさらに強くなり、窓を激しく叩くものだから、気になってバルコニーへ繋がる窓辺に視線をやると、窓の外に何か茶色いものが過ぎったのが見えた。
驚いたサリエルは外を見ようと窓を開けると、風圧が突風となり、髪を揺らす。
そこには、大きな鷹と、鷹の背にのっているフランツの姿があった。
「遅くなってごめんよ」
「一体これは…?」
「おいで、彼がお店まで送ってくれるって」
呆気に取られつつも言われるがままに、ヒタヒタと部屋の中からバルコニーへと歩みを進めた。
フランツから差し出された手に、まだ届かない距離だと言うのに、つられて己の手を伸ばした。
すると、鷹が羽をうならせ風が吹き荒れるので思わず身構えて目を瞑る。
感じた浮遊感の後に、覚えのある腕に導かれ、壊れを物を置くように、そっと地に下ろされた。
そのままサリエルは恐る恐ると目を開くと、そこには、澄み渡る空を背に、美しい銀の髪を靡かせて神秘的な目をして微笑む人がいた。
「さぁ 行こうか」
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