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ラドレス公爵邸の庭は、先代のお祖母様の趣味で、様々な種類の花が咲いており、魔法でその姿を枯らす事なく、1番綺麗な状態を留めていた。
魔法をそのような事に使うのを赦されているのは、先代皇太后様と仲の良かったお祖母様だけで、王族との親交の証としてラドレス公爵家の家宝のひとつとされている。
お茶会を開くと、いつ来てもため息が出るほど美しい景色と話題の庭なのだ。
6歳の男の子と言えども、庭に広がる景色に感動したのか、ラウルは見渡すように目を動かしている。
「話には聞いていたが…
これほどとはな…」
ポツリと呟いて私の前を歩き出した。
「どちらに行かれるのですか?」
「敬語はいい。
俺も使わないから、…サリー…だったか?
君も使わないで良いよ」
フッと、ため息をつきながら、諦めたような、つまらなそうな、面倒くさそうな、どうでも良いような…
いや全部を顔に表して、サリエルをあしらう。
こんな態度をされて苛立たない令嬢はいるのだろうか?
まぁ、でも。
私としてもこれ以上親交を深めるのは良い事なのか判断できかねていたので、相手が友好的で無い方が良いけれど…ーー。
ー…彼の今の態度から見るに、婚約を早い段階で無かったことに出来そうな気がした。
こう言う話は、まだ公表されていない今なら両家とも痛手がなく、穏便に片付けられるのだ。
もしも、ラウルが何も分からず、素直に親に言われた通り、私と婚約者として上手くしようとしているのなら、こちらも相手の立場を考慮して別の手段を考えざるを得なかったけれど…
「ー…ラウルは、この婚約あまり乗り気でないのね?」
相手が急に無礼になったぶん、私も本題を切り出しやすかった。
そんな私の問いかけには直ぐに答えず、ラウルは芝生を踏みしめて大きな木下にある木陰に腰を落ち着けた。
サリエルも何となくラウルの横に座る。
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