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そんな彼女を見下ろして、僕は思った。
僕もこの屋敷に来た当初1人…いや、いまでもふと僕は独りなのだと感じている。それは寂しくなかったと言ったら嘘になる。
それをはっきり態度で示せる彼女は、とても素直なんだろう。
そうわかってしまうと、知りたくなかったと嫌な気持ちになってしまう。
わかっている。彼女が悪くない事を。
けれど彼女は、言葉を理解していくごとに、母親の言葉がわかるようになったなら、今の面影は微塵もなくなるのだろう。
彼女の存在は、このままいくと、いつかは僕の首を絞め、居場所を奪うだろう。
そして、彼女にとっての僕の存在もまたしかり。
だから、このソファーにくっついて丸くなっている小動物に深く関わってはいけない。
かといって、手荒な真似は今の立場では出来ない。
僕がラドレス公に選ばれるためには、品行方正でいなくてはいけないのだ。
此処で義妹が大声で泣き出したら、それこそ寝静まった使用人や義両親が起きてきて、リリアスの思うつぼになってしまう。
まさか、それが狙いって事は……
…ないか。こんな小動物がそんな事考えられないだろうし。しかし丸いな。ハムスターみたいだ。
…どうしたものか…
サリエルの持ってきた絵本を、パラリと開く。
ウサギの兄弟の話だった。弟ウサギが兄ウサギの病気を治すべく、奮闘している話。
…本当に素直なんだな。
これを見て、兄妹は仲良くするものとでも学習したんだろうか。
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