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「ラウル、挨拶をしなさい」
バージェスは息子にそう促すと、ラウルは私と父の目の前でお辞儀をした。
「はじめまして。
ラウル・ベジスミンと申します。」
6歳の男の子にしてはしっかりとした挨拶に
私の父は満足そうに頷いている。
「将来が楽しみなご子息ですなぁ」
お互いの子供を褒めちぎりながら談笑する父とバージェスに、人の気も知らないで呑気な会話をしている大人達にため息をつきたくなった。
けれど、礼儀として私はラウルに向き直り、スカートをつまみながらお辞儀をした。
「サリエル・ミューラと申します。
皆んな私をサリーと呼ぶので、ラウル様もそのようにお呼びください」
「じゃあ、俺のことはラウルと呼んでください。」
父とバージェスはニコニコと嬉しそうにそんな私達のやり取りを見ている。
「早くも打ち解けそうだな。
そうだ、サリー、ラウル君にお庭を案内してあげなさい」
どうやら、私達の親睦をより深めるために
父が気を回して言うので、
〝親睦を深めたくない〟とここで頑なに拒否する訳にもいかず、私はラウル共々部屋の外へ出る事にした。
ーパタン
戸を閉めた後ラウルに「じゃあ、ご案内します。付いてきてください」と案内すると、
ラウルは大人しく私の一歩後ろをついてきた。
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