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はっ!ダメよダメ、街に行ったら何時間かかることか。
前世でもサーカスには行った事は無い事と、
今の日常を考えると随分魅力的な響きに好奇心が掻き立てられたけれど、ドタキャンはいけないわ。
「行きたいのは山々なんだけど、
今日は習い事が夕方からあって…」
「習い事?家庭教師は明日だと聞いているが。」
「武術を習っているの」
チラリとラウルの表情を見ると、微かに驚きの表情が浮かんだ事に気付いた。
まぁ、令嬢が武術を習うなど、皆無に等しいだろう。
貴族で習う者が居たとしても、それは男だけだろう。それも大体は早くても8歳で習い始める。
令嬢としての嗜みとしてはいらない項目であるし、何より品がないと思う人は居るだろうし
貴族の令嬢なのに恥ずかしい、もしくは変わり者と思う人は多いだろう。
それが公爵令嬢たるものが習っていると言うのだから驚きはもっともだ。
それらの事もあり、お父様は当初、武術と剣術を習うことについては強く反対をした。最後は根負けして渋々許可が降りたけれど、他言無用とされていた。
ラウルは少し、何かを堪えるように顔を晒し、プルプルと震えている。
サリエルは首を傾げながらも言葉を続けた。
「あのね、仮にも婚約者である貴方に、こういったことで隠し事は良くないと思うから正直に言うわ。
私4歳から剣術も習っていてね、だからほぼ毎日何かしらの授業はあるのよ」
言い終えた瞬間、〝クハッ〟っと、笑い声を堪えかねた声がラウルから漏れた。
「す、すまない。
だが君は本当に俺の予想の斜め上に行くな」
思っていた怪訝な顔と違い、クックと愉快そうに笑いながらもラウルは好意的な表情をしている。
「…私、貴方の事少し誤解していたわ」
恋愛シミュレーションゲームの主人公は、
良く攻略キャラに守られていたので、てっきりこういう品のない習い事をしている女性は苦手な方々なのかと思っていたけれど。
まぁ、ラウルからすればモブが武術やってようがなんだって良いのかしら。
「サリーは、あの先の大戦でその名を知らしめた初代ラドレス公の末裔。
鍛えていても無理からぬ事だ」
「・・フォローをしながらも、まだ笑っているわよ」
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