フランツの視点

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 兎に角このまま放っておくわけにもいかず、少女を一旦部屋に入れることにした。  まだ彼女が敵意をぶつけるには言葉も理解しきれない子供だというのがわかっているからだ。 「廊下は寒かっただろう」  そう言って、膝掛けを肩にかけてやり、ソファーに座らせた。  ふと、僕がこの屋敷にきて覚えている記憶を思い出す。ラドレス公爵邸の夜の廊下は、この季節寒いのは勿論だが、蝋燭が所々ともってるとはいえ暗くて怖かった。  この目の前の少女は、もしかしたら廊下が怖かったのかもしれない。というのも、ソファーに座っている彼女の横に腰掛けた僕にしがみついてフルフルと震えているからだ。 「そんなに怖い廊下を歩いて、なぜ来たんだ…」 「…にぃしゃま、ほん…よんで…」  フルフルと差し出された本を受け取って、彼女に自分の部屋への帰宅を促す。 「今日はもう夜遅い。部屋まで連れていってあげるから、これはまた今度にしよう」 「……」  彼女の部屋へ連れて行こうと  そっと持ち上げようとしたが、ソファーに掛けられた布をぎゅーっと引っ張ってテコでも動かない。 ーーなんだこの小動物。
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