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俺は大聖堂へと続く、一本のバカでかい橋を渡っていた。
周りは海かと思うほどの、これまたバカでかい湖が広がっていて、きっと晴れた日は景色が良いのだろうと思うのだが…。
「すんげぇ人」
今はどこを見渡しても人、人、人だ。
あちこちで話し声がこだまし、そのどれもが今回の主役の二人の話だった。ザワザワとしてほとんど聞き取れないのだが。マジうるせぇ。
んでなんとなく、その連中が一歩進む度に橋が揺れているような感じがしている。
この橋ぶっ壊れねぇよな?大丈夫だよな?
あまりに人が多いので、俺は酔ってしまいそうになり、端の方を歩いていた。んで歩きながら、頭の中で作戦を練る。
まずは潜入して、ユヅキを探す。んで説得する。
ユヅキが意地を張り続けるなら、無理やり拐うしかねぇが、できれば自分の意思で婚約を取り止めて欲しい。
その為にはユヅキの母親である、ナツメをどうにかしねぇとダメかもしれない。
あいつの呪縛から解放されないと、ユヅキはいつまで経ってもあのままだろう。
どうすればいいか検討もつかないけど…。
とりあえずナツメを探すか。
あいつもここに来ているはずだし。
でも大聖堂も広そうだしなぁ…。
ナツメの気配も覚えてないし、行ったこともないからどこに何があってとか全く分からない。
かといって誰かに聞くこともできない。潜入するわけだしね〜。
「ん〜。ま、なんとかなるだろ。とりあえず動かねぇと始まんねぇ」
俺は橋の手すりの上に立ち、そのまま大聖堂へ向け走る。この量の人混みの中を進むのは困難だと判断した為だが、足を踏み外すと格好悪い。慎重に行こ…。
…にしても長い橋だ。
その長くて広い橋の上には、ぎっしりと人が詰められている。それはまるで川の水のように動き、大聖堂前の大きな門へと流れ込んで行く。
その横を颯爽と走り抜けて行くのはなかなか爽快な気分だった。
門の近くまで来ると、結界が張られているのが分かった。王都ほどではないが、索敵と魔法封じ……あとは……あれ?知らない術式がある。
俺は思わず立ち止まった。
そしてその見たことのない術式を紐解いていくと、どうやら魔物に対する探知だけでなく、自動で痺れさせる魔法が発動する仕組みだった。
「…さっすが聖騎士さまの本拠地だな。でも作りは荒いっすね〜。こんなの簡単に解けてしまいますよ〜」
俺はブツブツと独り言を言いながら、結界を解いた。
んで門がある外壁をよじ登る。
上に着くと、大聖堂の全貌がようやく見えた。
「こりゃでけぇ…」
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