9.魔女の家

10/10
前へ
/2201ページ
次へ
扉を開けると、近くでテッドが動かなくなっていた。 いや、近寄るとイビキが聞こえてくる。 よくこんな気味悪い森の中で寝られるよな…。 「んあ?終わったの?」 足で小突くと、フラフラしながら立ち上がる。 俺も少し眠くなってるな…。 「もう今日は遅いし、泊まってく?そこの仮面の奴も納屋でいいなら寝床あるけど?」 「おっ!マジ…んごぉあ!?」 俺は慌てて同意しようとしたテッドの仮面ごと口を押さえ「ガァガァ!」と横に首を振る。 「いいの?遠慮しなくていいのにさ~。仕事熱心だね~」 「ガ…ガァガ」 まあな、とテッドの口を押さえたまま、さっさと森を出る。「行ってらっしゃい」と手を振るルディに別れを告げ、いざ王都へ。 「ぶはぁ!!ゲホッゲホッ!!な…なんだよ!?いいじゃねぇか泊めてくれるっつんなら…」 森を抜け、王都まで伸びる街道に出た辺りでテッドを解放した。 そして面倒だが丁寧に文字で説明する。 "魔女の家に泊まる"ということがどういうことなのかを。 無事に朝を迎えられるとは限らない。 実際、何回目かの訪問の際に、せっかくだからと一泊した。それが間違いだった。 朝起きると、アルマは拘束具でガッチガチに固められた上で逆さ吊りにされ(爆睡)、俺はというと何故か裸で手術台の上にいて………。 …ダメだ。 思い出しただけでも震えが止まらねぇ…。 だがテッドには伝わったようだ。 仮面の笑顔がなんでか恐怖に染まったように見える。 「だ…旦那。先を急ぎましょうか…」 俺は大きく頷いて、歩き出した。
/2201ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11238人が本棚に入れています
本棚に追加