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「そうですが、どうにも待ちきれないのです。昨夜からユヅキへの想いが止まりません…。あの儚く触れれば壊れてしまう危うさをも待ち合わせたような美しさは、この世のどこを探しても見つからないでしょう」
「キョキョ!そんなことを言って、お前は早くあのムスメを抱きたいだけであろう」
「そ、そんなことはありません!」
明らかに動揺するレクスを見て、いや絶対そうだ…と、修道女たちは思う。
「とぼけるでない!!あの透き通るような白い肌!!豊満な二つの果実!そして生娘特有の恥じらい!!それを早く味わいたいと顔に書いてあるわ!!」
「…フフ。父上には敵いませんな」
「キョキョキョ!!お前の考えはなどお見通しだ!」
「フッ。そうですね。父上のおっしゃる通りですよ。その秘部を目に入れ、触れた瞬間…!!それを想像するだけで私は……!!」
修道女たちは、思わず目をしかめる。
そしてこの下卑た会話をさっさと終わらせて欲しかった。
「キョキョ…。若いな、レクスよ」
◇◇◇◇
レクスの頭の中で、いいように弄ばれていることを知らないユヅキは、沐浴の真っ最中だった。
外壁の白とは対照的な黒い内壁。その天窓から少し登ってきた朝日が、キラキラと水面を照らしている。
無駄に広い浴場には、竜の型を模した像が四隅に配置され、口から緩やかにお湯を吐いていた。
湯気が立ち昇る中、ユヅキは何を考えるわけもなく、事務的に儀式の準備という流れ作業に身を任せていた。
考えれば、昨夜のガルに言い放った自分の言葉を思い出し、自己嫌悪に捉われてしまうからだ。
「ユヅキ様。そろそろお上がりください」
背後から、ネブルムの娘であるラフィーネがそう声をかけた。
修道士の格好をしている。しかし、その他の修道士が淡い水色なのに対し、ラフィーネは漆黒に身を包んでいた。
「着替えを済ませたあと、軽い朝食となります」
「はい」
ザバァ…と、ユヅキは湯から上がり、ラフィーネは手に持っていた大きめのタオルをユヅキに巻く。
「いよいよですね?緊張なさってますか?」
「別に」
「フフ。本日はユヅキ様にとって最高の日となりますよ」
「……私にとって、か」
貴女たちにとって、でしょ?とは言わない。
「フフフフ…。さ、こちらへ。最高に完璧なドレスをご用意してあります。あれは完璧なドレスですよ」
同じことを二回も言うな…とは言わない。
「そうですか」
ペタペタと衣装部屋の方へ歩きながら、ユヅキは素っ気なく応える。
それは覚悟を決めた、というわけではなく。
自暴自棄に近いものだった。
全てがどうでもよく、ただ、淡々と進行に身を任せるだけ。
「フフ。やはり完璧ね…うん。完璧」
修道女に着替えさせられたユヅキを見て、ラフィーネはうっとりとした表情を浮かべていた。
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