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「リコの街?」
南の大陸、随一のギルドがあるパブリエの街。
その筆頭である剣士レイドは、数日前に逃したゴブリンの行方を探していた。
転移魔法陣で各地に飛び、街の酒場や広場で冒険者や商人から情報を聞き漁るが、一向に足取りを掴めていなかった。
情報らしいことといえば、水門監視員の自宅に族が入り込んだってことぐらいだ。
ただ代わりに金貨が置かれてあったらしく、被害届を出さなかった。なので気づくのが遅くなってしまったのだ。
それがもしあのゴブリンだとしても、そこそこ日にちが経っている。あの足ならもうこの街にはいないだろう…。
レイドは焦りを覚え、がむしゃらに転移をしては無駄骨に終わるを繰り返す。
そんな折、昨夜合流したギルド・デュランの諜報員から連絡があったのだ。
「仮面の男か…」
大陸の中央、グラン山脈の麓に位置する街ドール。
レイドの所属するゲルトとは同格かそれ以上と謳われるギルド、デュラン。
そこの隠密部隊の話しによると、あの黒毛牛で有名な街で一騒動があったようで、さらに突っ込んで聞いてみると、なかなか興味深いことを教えてくれた。
「魔力暴走か。よく聖騎士が動かなかったな」
「その仮面の男は元々街の住民だったようですね。そして幼馴染の女の子のことで父親と口論になった際、火炎魔法を発動したのです」
「身内での痴話喧嘩か?そりゃ流石に教会は無視するな」
ここまでなら、レイドはさして興味が湧かなかった。本当はこいつとは同業他社。競うべき相手だ。情報共有などレイドの本意ではない。
もし下らない情報なら、意に介さない気でいたのだが、
「その時、仮面の男が言ったそうですよ。
"魔物を追っていた"
とね…」
それを聞いた瞬間、レイドは胸の高鳴りを抑えることができなかった。
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