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いつの間にか、霧は晴れていた。
ルディは倒れた木の側で震えている。
うん。やっぱりやり過ぎたかも…。
「旦那、どうするんで?」
どうしよう…。
あ、そうだ。
俺はカバンから、ルディへの手土産と思って買っておいた物を取り出し、火石で火をつけた。
ゆらゆらと煙が立ち込め、甘いバニラの香りが漂ってくる。
「っ!!そ、それって…」
ルディはガバッと顔を上げ、それを見る。
最初に会った時、ルディはバニラの香りがするこのお香を気に入り、それ以来ここに訪れる時は必ず買ってきていたのだ。
そしてメモの書かれた羊皮紙を見せると、
「う…嘘…。そんなわけない…だって…」
と俺に目線を向けた。
「ガァガァ」
よっ、という感じで手を挙げる。
それでもまだ疑心暗鬼な表情だ。
まあ無理もない。見た目は完全にゴブリンだもんな…。
「旦那、この魔女と知り合いなのか!?」
「ガウ」
ちょっとね、といった感じで、目だけテッドに向け返事をする。
その時、バシッと羊皮紙を持っていた手を叩かれ、羊皮紙はヒラリと地面に落ちた。
「騙されるもんですか!!嘘よ!!アンタみたいな魔物があの人だなんて!!」
だから呪いかなんかでこうなっちゃってんだよなぁ…。どうやったら信じてもらえんだ?こんだけ証拠が揃ってんだけど…。
う~ん…。
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