降ってきた恋

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   最初に見たのはテレビでだった――。  すごいなー。  お兄ちゃんとそんなに年違わない子なのに、と思った。  そのうち、彼は『情熱の貴公子』と呼ばれるようになった。  クールな顔と演奏とのミスマッチも受けたらしい。  トーク番組などに出ることもなかったので、何処の誰かもよくわからず、ミステリアスなのもまたよかった。  あのとき、会場で彼の演奏が終わっても、私はぼんやり口を開けて座っていて。  お兄ちゃんは立ち上がり、夢中で拍手していた。  あんなお兄ちゃんを見たのは初めてだった。  その人の演奏が今はあんなに間近で聴けるなんて。  彰人が帰ったので、ゆっくり眠れると、早めに布団に入った花音は、うとうとしながら、いろいろと思い出していた。
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