降ってきた恋

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 うわっ、と思った瞬間、誰かが花音の腕をつかんだ。  それで持ちこたえた隙に、なんとか、爪先が床に着いて踏ん張り、こけずに済んだ。 「あ、ありがとうございますっ」 と空いてようやく見えるようになった床に膝をつき、見上げる。  本当に高校生か? と問いたくなる、巨人のようにいかつい少年たちに囲まれた花音は、彼らの隙間から自分の腕をつかんでくれている手を見た。  細くて長い指。  繊細そうだが、明らかに男の人の手だった。 「あのっ」 と言ったが、その手は花音が体勢を立て直したのを見極めたかのように、花音を離し、制服の波に消えていってしまう。  立ち上がって、お礼を言わなきゃ、と思ったのだが、その瞬間、扉が閉まって、電車が動き出した。  揺れた弾みに、しゃがんだままの花音はおじさんのお尻に頬を張り倒される。
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