ハニートラップ

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 そんな昌磨が、朝、あの電車に乗っていたはずはない。  背の高い拓海は本当は、誰が助けてくれてたのか知っていた。  だが、言わなかったのには、おそらく理由がある。  助けてくれた相手を見ていた拓海は、彼がそうだと、私に教えたくなかったのだ。  昌磨が現れ、私が彼が助けてくれた人だと言い出したとき、本当は違うと言いたかったのだろうが。  一度知らないと言った手前言えなかったのと、自分が言いつけるような形になるのが、拓海の性格から言って、耐えられなかったのだろう。  エレベーターで階数ボタンを押しながら、昌磨はひとつ溜息をついたようだった。 「ちなみに今日、会いましたよ。  私を電車で助けてくれた人」  昌磨がこちらを見下ろす。
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