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「だって、お前、本当に、助けてくれた手だけが好きだとか言いそうな奴だから怖いじゃないか」
と言う。
昌磨は、本当に助けてくれた人と花音が出会わないよう、毎朝、遠回りをしても、迎えに来てくれていたようだった。
どのみち、彼は滅多に満員電車に乗らない人だったのだが。
「お前と出会って、俺はやっぱり情けない奴だと思い知らされた。
あのコンクールのときと同じだ。
大事なものを手放したくなくて、真実が告げられなかった」
「それはあれですか?
私がピアノと同じくらい大事だっていう……」
「いや、そこまでかな?」
と言ってみせる昌磨に、もう~っ、と言い、胸を押して離れた。
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