Epilogue bridge─エピローグ・ブリッジ─

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「あの…俺、どのくらい眠ってました?」 そう尋ねると、若い看護師は愛想良く笑って、『丸二日、寝ていましたよ』と答えた。  丸二日… あれからもう、二日も経過しているのか… 惚けた様に押し黙る健介を尻目に、看護師の女性は、『面会に来た』という人物を呼びに行く為、サッサと退室してしまう。  数分後── 控え目なノックと共に、病室のドアが開け放たれた。 「よぉ、やっと起きたか?」 「と…父さん…!?」 健介の実父…藤倉警視総監が、紺色の制服姿のまま現れた。 近くにあった丸椅子を引き寄せると、大儀そうに身体を揺らして腰掛ける。 「気分はどうだ?少しは良いのか??」 藤倉警視総監は、あくまでも気さくに話し掛けてくる。 健介は一瞬、態度を硬化させたが──直ぐに『息子』の顔に戻って、父親の話に乗った。 「あの、俺──」 「解っている。よく頑張ったな、健介。」  厳格な父親に手放しで誉められて、彼は却って気まずくなる。 こんな風に、父と面と向かって話をするのは、『あの日』以来だ。  交わす言葉も無く俯いていると、父は状況を察した様に話題を変えた。 「健介…お前、警視庁に戻れるぞ。」 「え──?!」 「心悠会事件の功績が評価されたんだ。お前は一階級特進して、警部となる。その後、SITに新しく創設された《第5係》のメンバーとして特異事件の専門捜査に就いて貰う予定だ。」 「SITって…特殊捜査班ですか!?《第5係》──俺が!?しかも警部?」 健介は、目を白黒させながら、今耳にしたばかりの単語を反復した。  ──何を言われているのか、直ぐには、理解出来ない。藤倉警視総監は、呆れた様に嘆息すると、順を追って話し始めた。
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