Epilogue bridge─エピローグ・ブリッジ─

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Epilogue bridge─エピローグ・ブリッジ─

 射し込む朝の陽光(ひかり)… 微かに聞こえる小鳥達の(さえ)ずりに、健介は、ゆっくりと瞼を開けた。 淡く霞んだ視界に飛び込んで来たのは、無機質な白い天井である。  ──健介は、軽い既視感に捕われた。 いつか何処かで、同じ景色を見た様な気がする。 白い壁、白い天井に区切られた密室。 一体あれは、何処だったろうか? ぼやけていた記憶が、徐々に焦点を結んで行く… 「あ…!」  突然、全ての記憶が蘇った。 そうだ…あの日。心悠会の本部で、俺は、大御堂の暴挙に()り負傷したのだ。 ──それから、どうなった?  突然現れた、灰色の髪の長身の男… 確か、九鬼棗と名乗っていた。 彼が狙っていたのは、心悠会でも大御堂でもない。 六星一座の金剛首座──甲本薙だった。 ………… ………… 「首座さま!?」  大声で叫んで、ガバ!と身を起こす。 その途端、焼ける様な痛みが全身を貫いた。 「…っ、痛てぇ…」 特に強く痛む胸を押さえて、健介は前屈みに(うずくま)る。ガーゼを貼られた胸の傷は、割れた照明器具の金属片が突き刺さった痕だ。 「あら、藤倉さん。お目覚めになりました?」 鈴を振った様な声が聞こえて、健介はハッと顔を上げた。 二十代前半と見られる愛らしい女性が、此方の様子を窺うように覗き込んでいる。 「ぅわ!」  相変わらず女性に免疫の無い健介は、大袈裟なリアクションで飛び退いた。 白衣の女性は、クスクス笑いながら言う。 「ごめんなさい、驚かせちゃいましたか?今ちょうど面会の方がいらしたので、起こそうと思っていたんですよ。」 「面会…?」 その言葉で、漸く自分の措かれている状況を把握した。 ここは病院の個室だ。 白い壁に白い天井── ほんの僅か開かれた窓からは、僅かに寒気を帯びた早春の風がそよいで来る。 ベッドの脇に置かれた花瓶には、見事な白いカサブランカが花弁を拡げ、馥郁(ふくいく)と芳香を放っていた。
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