幕間劇~intermedio(インテルメディオ)

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幕間劇~intermedio(インテルメディオ)

《1》帰還。─キカン─  星の無い夜空に、淡い雪雲が掛かる。 薙らを乗せた新幹線は、一路、北を目指していた。  初めて担当した警察絡みの事件は、思わぬ結果となってしまった。 《心悠会事件》は、カルト教団が起こした事件としては、近年最悪の《猟奇殺人事件》として、世を震撼させている。 黒幕とされている教祖は、刑法上の理由で極刑を免れる可能性があると見られていた。  …薙は、複雑な気持ちで一杯になる。 世の人々は、本当の『黒幕』が誰なのかを知らない。 《鈴掛一門》という暗殺集団が、《心悠会事件》に深く関与していたという事実を知るのは、彼等、《六星一座》と、警視庁に新設された《特殊捜査班第5係》のメンバーだけだった。  悔恨にも似た苦さを噛み締めながら、薙は、ふと車外の景色に目を移す。 曇天の夜空に、星の光は見当たらない。 まるで、人の目に見えない場所で怪しく光を放つ、《鈴掛一門》の頭領・禊を象徴しているかに思えた。  我知らず身震いする彼女を見て、向かい合わせに座っていた遥が、気遣わしげに声を掛ける。 「薙…寒いの??大丈夫?」 「大丈夫。寒くないよ、全然。」 無理に笑って見せる彼女の顔は、見るからに青褪めていて、説得力の欠片も無い。 遥は、小さな嘆息と共に言った。 「グリーン車とは言え、座りっぱなしで疲れたでしょ?ちよっと、自由席のデッキまで行ってみない??」 「え…と、ボクは別に…」 「長旅だし、退屈だろう?気分転換にさ、ね??行こう?」 断る理由も(いとま)も無いまま──薙は、遥に促されて席を立つ。  窓側の席では、苺が眠った振りをしていた。
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