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「笹野さんの言ってたこと、なんか分かる気がするなー。『綺麗な世界』って……」
観終わって感想を言いながら、ふと隣を見てドキッとした。
笹野さんがぽろぽろと涙を零していた。
「す、すみません……何回も観てるのに……」
その綺麗な涙に吸い寄せられるように、無意識に手を伸ばしていた。
親指でそっと涙を拭う。
その途端、笹野さんの顔が真っ赤に染まって我に返った。
「ご、ごめん!!…そうだ!他のDVDも借りてもいい!?観てみたい…!」
「…は、はい!もちろんです!」
……危なかった。
なんとか持ちこたえた、俺の理性……。
その夜借りたDVDを観ていると、ひなから電話があった。
「おう、バイトお疲れ」
『うん!今日はごめんね?』
「本当だよ!急用って青木さんか?あ!笹野さんにも謝っとけよ!」
『うん、でもさぁ……電話終わって戻ろうとしたら……戻れるような雰囲気じゃなかったから……?』
電話の向こうでは明らかな含み笑い…。
……あ!
アレを見られてたのか!?
『仕方ないからもう一回ゆうくんに電話したら、来てもいいよって言ってくれたから……』
「お前誤解すんなよ!?アレは事故で別にお前が気遣うようなことは何もねえよ!!」
『ふーん……でもリヒトは本当に笹野さんのこと何とも思ってないの?』
……俺は……
……本当は、ずっと頭から離れない。
あの笑顔を、見た時から……。
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