見習い彼女

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俺がちょっとレジを離れた間の出来事だった。 慌てて戻ると、案の定顔を強張らせて固まっている。 「なぁ、いいだろー?」 「…………ゃ……」 「すんません!!その子まだ見習いで何も知らないんで、俺が聞きます!!」 「あー?違ぇよ。この子に連絡先聞いてるだけだっつの」 「そういう事でしたら、お客さんじゃないので帰って下さい」 「なんだと!?生意気なガキが…っ!!」 「きゃぁっ!」 殴りかかろうとしてきた瞬間、受け止めた腕を捻り上げる。 「いててててて!!」 男は慌てて逃げて行く。 …リョウ兄に教え込まれた護身術が初めて役に立った。 「……ありがとうございます」 後ろから蚊の鳴くような声。 ……もしかして逆に怖がらせた? 俺は出来るだけ安心させるように、優しく笑いかけた。 「なんだよーさっき『きゃあ』って大きい声出せてたじゃん」 そこにひなも帰ってくる。 「なんか大きい声聞こえたけど、大丈夫?」 「ああ、大丈夫。じゃあ笹野さん、休憩行ってきて」 「あ…はい……」 交替で休憩に行って、またレジに戻る。 少しずつだけど、ぎこちないながら返事をしてくれるようになった気がする。 ……それだけじゃなくて、気付いたら教えてない時にも俺の後ろにピッタリくっついてくるようになった……ような……。 ……この感じ、身に覚えがある。 俺は何故かよく近所の子どもとか、犬とかに懐かれて付いて来られることがある。 ……それと同じだ。 ……いや、もちろん懐いてくれて嬉しくはあるんだけど……。 …………ふ、複雑だ…………。
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