見習い彼女

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もうすぐバイトが終わる時間になって、夜勤の森さんと大久保さんが出勤してきた。 「あっ!笹野ちゃんだー!今日も可愛いー!」 いつもながらテンションの高い森さん。 その瞬間、笹野さんは俺の背中にサッと隠れた。 「え!?なんで染井!?お前澤ちゃんだけじゃなく笹野ちゃんまで…!!」 「なんですかそれ!?大体ひなのお守り役はもう卒業しました!」 騒がしい森さんが行った後、まだ隠れて固まっていた笹野さんに話しかけた。 「大丈夫だって。ここの人みんないい人だから。…そういえば帰りは一人で大丈夫?」 「……はい、ここの上に住んでるので……」 「ああ!…そうだったんだ」 コンビニの上にはマンションがある。 バイトが終わった後笹野さんを見送って、ひなと一緒に家路に着いた。 「でもリヒト、笹野さんと仲良くなってすごいね!…あたしなんか、話しかけても全然返ってこなかった…」 「仲良くなったかは知らないけど……多分まだ緊張してるだけじゃね?」 「そっかな?嫌われてないといいんだけど……あたしもがんばろー!」 それからは少しずつだけど返事をしてくれたり、仕事も頑張って二人でならレジに立てるようになってきた。 そしてある日、俺が休憩から帰ると意外な展開に…。 「えーほんとー!?きゃーすっごい嬉しいー!」 「…おつかれ。休憩いただきましたー」 「あっリヒト聞いて!!笹野さんと好きな映画が一緒だったの!」 「えっ!?それってあのひなが好きなマニアックなやつ?」 「そうだよー!岩本監督の!」 ひなが好きな映画監督…俺は観たことはないけどよく話は聞いてる。 二人で盛り上がって、目を輝かせた笹野さんは今までに見た事ないぐらい喋っている。 ズキュン ……やばい、不意打ちで初めての笑顔……可愛すぎる……。 それからというもの笹野さんは、ひなにも懐くようになった。 仕事もひなのアドバイスでメモを取るようになってから、ぐんぐん成長していった。 ……喜ばしい事なんだけど……なんか寂しいような……。
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