樹木葬

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 三十三歳にもなって、私はまだ未婚で、付き合っている彼氏もいない。  親孝行が結婚だというなら、私はそれが出来ない親不孝な娘なんだろう。  思い返せば、私の人生は、いつも弟に振り回されて母の記憶があまりない。  幼稚園は泣いてばかりで、食も細く、おまけに協調性にもかけている子だ。  なんとか友達は出来ても、母は友達と上手くやっているか、お弁当は食べれたか、といつも心配そうにしていた。  小学生に入ると、今度は背が伸びなかった。  すでに年下の弟にかかりきりになっていて、母は私のことにまで手が回らない日々。  そんな私は、よく母に八つ当たりをしていた。  どうして弟ばかり可愛がるの? と。  結局、そんなことが中学、高校になっても続いて、私は常に弟に嫉妬をしていた。  少し出来の悪い弟は、職質を受けたり、テストで良い点も取らずに遊んでばかりで、母の手を焼いていた。  そんな弟のどこがいいのかと、私はずっと悩んでいる。  今だって、あの頃の弟がなぜ可愛いのかと分からない。 (結婚したら分かることもあるのかな。だったら、ずるいな)  なにもない丘を見ながら、私は眠りこけていたベンチに戻った。  また座ると大きな大木を見つめて、ぼんやりと母を思い出す。  結局、さっさと結婚した弟を心配して、身体を壊しやすくなり、私は自立して一人で暮らしをしている。そして最近になって、母の身体にガンが見つかり、闘病も空しく無くなった。  思えば、可愛がられた記憶もないわけだ。  こうしてお墓参りにくることだって、長女としての義務だと思っているし、誰かこないと寂しいだろうと思うからで、母に会えない寂しさを紛らわす為じゃないと思う。  私はひと呼吸おいてから、ベンチから立ち上がりその場を去った。
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