0人が本棚に入れています
本棚に追加
三十三歳にもなって、私はまだ未婚で、付き合っている彼氏もいない。
親孝行が結婚だというなら、私はそれが出来ない親不孝な娘なんだろう。
思い返せば、私の人生は、いつも弟に振り回されて母の記憶があまりない。
幼稚園は泣いてばかりで、食も細く、おまけに協調性にもかけている子だ。
なんとか友達は出来ても、母は友達と上手くやっているか、お弁当は食べれたか、といつも心配そうにしていた。
小学生に入ると、今度は背が伸びなかった。
すでに年下の弟にかかりきりになっていて、母は私のことにまで手が回らない日々。
そんな私は、よく母に八つ当たりをしていた。
どうして弟ばかり可愛がるの? と。
結局、そんなことが中学、高校になっても続いて、私は常に弟に嫉妬をしていた。
少し出来の悪い弟は、職質を受けたり、テストで良い点も取らずに遊んでばかりで、母の手を焼いていた。
そんな弟のどこがいいのかと、私はずっと悩んでいる。
今だって、あの頃の弟がなぜ可愛いのかと分からない。
(結婚したら分かることもあるのかな。だったら、ずるいな)
なにもない丘を見ながら、私は眠りこけていたベンチに戻った。
また座ると大きな大木を見つめて、ぼんやりと母を思い出す。
結局、さっさと結婚した弟を心配して、身体を壊しやすくなり、私は自立して一人で暮らしをしている。そして最近になって、母の身体にガンが見つかり、闘病も空しく無くなった。
思えば、可愛がられた記憶もないわけだ。
こうしてお墓参りにくることだって、長女としての義務だと思っているし、誰かこないと寂しいだろうと思うからで、母に会えない寂しさを紛らわす為じゃないと思う。
私はひと呼吸おいてから、ベンチから立ち上がりその場を去った。
最初のコメントを投稿しよう!