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(わかる……わかるよ、サイセー……)
高速道路で西を目指しながら、あたしは自分自身の妄想により、あやうく涙ぐみそうになった。
あたしはサイセーのように一旗揚げてやろうと思って東京に出てきたわけではない。でも、地元にも都会にも身の置き所がなくて、宙ぶらりんのような気持ちですごすことがどういう感じがするものかは知っている。
まあ結果的に、室生犀星は国語の教科書にも載るくらいビッグになったわけだし、あたしも東京で仕事を見つけて飢え死にしないですんでいるのだから万々歳だろう。
問題があるとすれば、犀星がおそらくは彼の目指した文学的成功を収めたあと、故郷から諸手を挙げて迎え入れられたのとは対照的に、あたしにとってのふるさとは、相も変わらず、帰るのが少し憂鬱な場所だ、という点だった。
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