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母を見舞った翌日の午後、再びセイに会った。
まさか弟の交際相手に帰省中、二度も遭遇するとは思わなかったけれど、向こうからあたしを訪ねてきたので、二度目は偶然ではなく必然だ。
母の退院が二日後に決まっていた。病院を引き払う際の手伝いをするために、職場に連絡して有給を延長したものの、当日までは取り立ててやることもない。
無聊を託ったあたしは、国道を南下して海まで遠乗りをしてきた。ノアは朝から仕事に出かけていた。
遠乗りから戻ったあと、帰りの高速走行に備えてバイクの点検をしていたときに、キコキコとペダルを漕ぐ音がして、見覚えのある自転車が家の敷地に入ってきた。
自転車の乗り手は、こちらも見覚えのあるひょろりとした体型で、坂道をものともせずに立ち漕ぎをしている。ついでに、どう見ても制服にしか見えない紺のブレザーを着ていた。
「ノアはいないよ」
ママチャリを降りた相手にそう声をかけると、セイはうなずいた。
「知ってます。ええと……前原花音さん……ノアさんのお姉さんですよね?」
ん?と眉を上げる。
カラカラと自転車を押して車庫までやってきた相手は、あたしとバイクの前で立ち止まると、ぺこりと頭を下げた。
気まずそうではあったけれど、顔を上げてまっすぐにこちらを見たときの様子は、やっぱり肝が据わっている感じで、やるな、と思った。
「昨日はすみませんでした。変なところをお見せして」
正確には“見た”というよりも“聞いた”のだけど、大した違いではないから訂正しない。
「それを言いにわざわざ? ノアがそうしろって?」
「いえ、そういうわけでは」
相手の顔に浮かんだ表情を見て、「ああ、ごめん」と手を上げる。
「ノアの恋人だし、子供扱いは失礼だったよね。自分の判断できてくれたんでしょ? あたしはもう気にしてないから、ノアをよろしくね」
セイはあいまいな表情で笑ったあと、「ありがとうございます」と言った。
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