魔王は俺達の業、対決せねばならない!

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魔王は俺達の業、対決せねばならない!

「黙れ!」醜悪な顔をなおいっそう憤怒で歪めて魔王が私を一括する。しかし臆せずに、そして赤裸々に、私は自らと巷の‘我ら’を述懐し続けた。「此処にいる皆さん!私やあなたがたは臆病だ!自分の不幸を専ら人と世のせいにして、殆ど自分を顧みることがなかった。不平や不満ばかりだった。そんな心が此処で、この世界で、魔王への養い糧となっていた。自らして、自らをさいなむ鬼を造っていたんだ。しかし今怖いのは此奴じゃない!自分を呈してでも友を救おうとしているこの子の心が怖いんじゃないのか!私は…弱くって、人から世から逃げて逃げて…その挙句、今最大の恐怖を突きつけられている。この魔王は私やあなたがたの業だ、人生で造って来た偽我の総体だ。逃げれば逃げるほど大きくなる、強大になる。だから‘今’超えろと、神は云われる。その決心がついた時、キリスト様の御使いは現れた…」 「おのれ、ゴミめ…」言葉にならないほど怒り狂った魔王が巨体をめぐらせて片足を挙げ私を踏み潰そうとする。「止めて!」鋭い制止の声をあげてA子が駆け寄って来、倒れ込んだ私を身で覆った。B子が戻るようにと絶叫し、生前無慈悲と不条理を散々味わった群集がその再現を望んで固唾を飲んで見守る。「A子、おまえはわしよりこんなゴミを選ぶのか?」 抑揚を抑えた魔王の最後通告に何も答えず唯黙って見返すA子。     【茂平を踏み潰そうとする魔王、A子が駆け寄って来て庇う】e2a099bc-ddd6-479e-9868-25023c56c2fc                        
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